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風雷暴見聞録

第12章 10.


「俺はサイタマ。お前を迎えにきたんだよ。何でお前が分かったのかっていうと、ヒーロー協会のホームページに顔写真付きで既に載ってるからな。お前、銃と雷と風で戦うって紙に書いたんだろ?それらも公開されてんぞ。
で、移動しながら話して良い?」

こうしてる間にも暗くなり始めていた。足下が見えなくなる前に、目的地に辿り着きたい。私も頷いて移動を始めた。
サイタマは疲れた表情も出さず、走る。

「ゾンビマンってのが急に来て、隣にハルカが引っ越してくるから面倒みろってな。全然掃除してないから俺の同居人に今、掃除を任せてる」
『そうだったのか。さっきは怪人と間違って疑ってしまい、申し訳ない。疑い過ぎるのも厄介なもんだな…』

今まで不審だ!と思ったら相手を警戒して生きてきた。警戒すれば一般人は逃げるし、相手が怪人なら立ち向かってくる。そうしなければ10年間生き延びる事もなかっただろう。
日々を過ごしていくとそういった警戒をしていたから勘が研ぎ澄まされた。それは私の中の能力も上がらせた。

「うーん、ま!疑うに越したことはないと思うけどな」

そうサイタマはフォローするが、よく考えてみるとゾンビマンを2度殺した私は何なのか。
常に警戒するのはやはり良くない。間違って仲間を傷付けてしまう。

『いや、多少は直そうとは思う。余りにも疑いすぎてゾンビマンを殺してしまったしな…2度』

サイタマはファッ!?と妙な叫び声を出して、走りながら私を見る。恐ろしい!と言わんばかりに目を開けて。

「え?あいつ元気そうにピンピンしてたぞ?本当に殺したのか、想像上じゃなくて?」
『確かだよ、怪人であれば死んでる』
「へー…死なないっていうの、マジなんだ…。あ、俺んちこっちこっち」

方向の修正をし、いつの間にかZ市のゴーストタウンに着いた。予定より早い到着だ。幾つかの建物が崩壊しているのは、かつての隕石騒動だろう。
…が、このサイタマという男…なんの能力を持っているのかは知らないが、ヒーローというのは本当のようだ。涼しい顔をして遠慮無しに走る私に付いてくるのだから。
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