第12章 10.
屋根の上だし丁度良い。ここからZ市まで走ろう、速く着くし。
一歩蹴り出す度に風を出せば、超人的なジャンプ力とスピードで進む。木の葉や鳥の羽根を風が巻き込んで舞う。目的地であるZ市に入りもう一度地図を見ようとしたら何かの気配。
なるべく脆くない屋根で私は止まった。
今日はやたらと多いな、と気配のした方向を見る。気配はいつの間にか実体となっていた。
「お前すげーな。それもあれ…、戦闘スタイルのやつ?どうやってんの?」
な、なんだこいつ…。
カラを剥いたたまごのような、電球のような頭は夕日を浴びて反射している頭部。顔のパーツは付いてはいるが、まるで世界に絶望したような死んだ目。
気が付けば私のすぐ横に居た。気配だったのにそこに居た。こいつはただ者じゃない。怪人の一種と見なす。
私は武器を構えた。
『たまご怪人?白熱球の怪人?そんな所だろう。私は急いでいるんだ、それとも脳天ぶち抜かれたいか?』
「俺怪人じゃねーって!お前と同じヒーローだから!物騒なもんしまえよ」
ヒーロー…というより、怪人か一般人寄りな男は私に武器を早くしまえ!と言う。
というか今さり気なく私をヒーローだと言ったな。
『何故ヒーローだと分かった?私は今日からヒーロー協会に属する身となったんだ。演技が下手なハゲ怪人だな』
「誰がハゲだ!誰が怪人だ!あー!めんどくせー奴だな、お前は!ゾンビマンってやつに頼まれたの!お前の面倒見るようにってな!」
片手で頭をおさえているので髪がなくて寒そうだと、声は出さずにじっと見ていると「頭を見るな!」と言われたので、目の前の夕日を見るのをやめた。
しかしゾンビマン…、あいつが頼んだ、私が世話になるお隣さんか。
私は武器をしまい、少し疑いながらも話を聞く事にした。ハゲたヒーローはやっとしまった、と呆れながら話を続ける。