第11章 9.
コンボが決まるとゾンビマンは俺には無い髪をボリボリと掻いてあー…とか言葉を探してるようだった。掻く髪は抜け落ちて俺にはボリボリなんと音もう出ないけどそうやって髪ある自慢か?俺は少し苛ついてズボンの上から自分のケツを掻く。俺のケツがボリボリと音を立てて掻かれた。
そろそろ玄関のドアを閉めて欲しいんだけど。蚊とか入ってきたらどうすんだよ、というか帰れよ。
そんな願いは空しく、ため息を吐いたゾンビマンは急に語り始めた。
「あいつはよ、元々は孤児で、ようやく親が見つかったと思ったらその親に酷い事をされてよ。今はそこから逃げ出して野良犬みてーにふらふらして生活してんだ、あばら骨が見えるような、ロクなもんも食ってねぇ生活だし。もっとマトモな生活をさせてやりてぇんだ。
10年前はそりゃ無邪気にはしゃいで笑顔も可愛かったもんだ。けどあの親のせいで色々塞ぎ込んじまった。出来れば俺の傍に置きたいが、俺は家にずっと居る訳でもないし、俺も普通な部類じゃねーからよ…」
「先生は忙しい。20文字以内に簡潔にまとめてから発言しろ」
「…あー、家なき子を世話してやってくれないか?これでいいか?」
そいつは可哀想だな、と思いながらパソコンの画面のハルカに目を向ける。
こいつ、家無いのか。というか、孤児で親とか優しくされた事が無いのか?ん?このゾンビマンは昔を知ってるんだったな。どういう関係なんだ?
離れていく足音に顔を上げると、コートを翻して帰ろうとしているゾンビマン。
返事もしてねーのに強制か。
「俺に拒否権はねーのかよ!」
「俺は用事があるんでな、また寄るからハルカをよろしく頼むぜ」