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風雷暴見聞録

第7章 5.


──研究所を抜けて、追ってくる怪人を殺されながらも撃退し、森の中を彷徨う。握ったの手は少しずつひんやりとし始めていて、荒い呼吸が聞こえる。
無我夢中に月明かりだけが光源の森を走り、怪人ももう追ってくる事も無くなった辺りで俺達は立ち止まる。
…いや、正確には俺達じゃない、俺だけだった。

「もう追ってこないな…」
俺の言葉は自分の耳に届いて、隣に居るはずのハルカの耳には届いていなかった。
ああ、そうだ。握っていた手。俺の腕が切り落とされてはぐれた事にさえ気が付かなかったんだっけか。
遠くで爆発音が聞こえ、森が少し明るくなる。隣には誰も居ない。見回して名前を呼ぶが、返って来なかった。


──ハルカを探して広い森中を走った、けれども姿を見る事もなく。
爆発のあった研究所に行けばもぬけの殻で、俺は綺麗に再生した腕に責任を押し付けるように血が出るほどに掴みながら、声が枯れるまで朝日に叫んだ。
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