第102章 100.暴かれる事のない真実の墓
言葉が、出やしねぇ。
あらゆる奇跡を通って生きてこれたのだと、脳裏にハルカの姿を思い浮かべた。
「引き取って初めに治療。治療してようやく痣が残る程度になった。そしてクローンの作成…、77号と76号の実験で再び76号に耐性がなくなる結末…。そしてハルカに義務教育を受けられない分教育面を。引き取ったハルカはあまり頭が良いわけじゃなかったからね、クローンには脳が活性化するように薬剤は投与している、だから学習能力が高いんだ、」
「孤児院はどこだ?その、希望の森って場所は」
「まあ、最後まで聞きなさい」
まあまあ、と手で制止され、ジーナス博士は続けていく。
俺の知りたい情報はもう少し後のようだ。
「やがてゾンビマン…、66号が研究所を破壊して、77号や便乗して76号も逃げてしまう。私は仮拠点を確保した後に、ハルカが孤児院に戻ってきていないかを確認に行ったんだ、どちらのハルカでも普通の子供よりも私には価値があったからな。
そこで知ったのが、孤児院は襲撃されたという事実だ」
「なんだと…?それは…ハルカが、風神か雷神かどっちかが孤児院襲撃に関わっていたという事か?」
俺の知らない10年にハルカが復讐を遂げる可能性もある。俺だって…進化の家に乗り込んだ。惨たらしい実験を繰り返されて恨まない訳がない。
「いや、明らかに別の勢力だ。風神も雷神もあのような破壊はしないだろうし、ハルカは人を殺さないだろう」
「殺…、人間も死んでいるのか!?」
「ああ…慰霊碑が建てられていた。とにかく、孤児院はすでに無い。ハルカの情報も肉親の情報も無いだろう。
そもそも、捨てる側が違法な孤児院に個人情報なんて教えると思うか?」
法に触れる孤児院に、捨てる側が…孤児院が摘発されて、しょっぴかれる内容をわざわざ教える必要はない。
誕生日を聞く、とか生ぬるい話で完結しなかった。
あいつは…、親が犯罪者だの、災害孤児などそういうものではなく、親から本当に不要であると判断されて捨てられた、本物の…──。
そこまで考えてその先に至るのを止めた。最低だ、恋人をそう判断するのは。