第102章 100.暴かれる事のない真実の墓
例え、オリジナルだけがその過去を持っていたとしても、クローンであるハルカはどうなのか。過去が死んだから、クローンが生まれたその日からが新しい人生か?そうじゃない。
恋人も戸籍が無く、義務教育を受けられず。そして記憶を引き継いでいる。
どっちのハルカが可哀想だとか言えない。そもそも可哀想だと思うことがハルカの人生を踏みにじる事だ。
俺に出来ることは何でもしたい。
例えば…、そうだな。俺とハルカの家庭を作って、子供作って家族として人生を送らせるのはどうだろうか?
大人になって、子供も育って、ばあさんになって、孫を抱かせて、幸せな人生であった、と安らかに死にゆくハルカを看取ってやりたい。
俺はその場で立ち上がった。
「ジーナス博士、調べて欲しいものがある」
「なんだ?孤児院のあった場所と襲撃したヤツの件か?」
「……いや、その話はもういい、別件だ」
何のことだ、と見上げる博士。
言い辛いものはあるが、他よりは理解がありそうだ。こいつに頼むのが一番だった。
「俺の精液検査をして欲しい」
「ブッ、…え?精液検査………か?」
吹き出した拍子に眼鏡がずれて掛け直す。突拍子も無い話だっただろう。こいつに説明するのもなぁ…。
仕方がねぇ…。
「ハルカと一緒になった時にガキを作りたい。俺の不死身の体で種があるかの確認だ」
「ああ、そういう事か……。ハルカを家族として迎えた身だ、もしも君があの子と一緒になると言うのなら、君と娘さんを下さいというやり取りをするのか……」
「なんでそんな回りくどい事をしなきゃならねーんだよ!ったく…、どこに出せば良いんだ?精液検査って入れ物に出すんだろ?」
後頭部をがしがしと掻いて、面倒くさいやりとりを想像してしまった。
そもそも…、正常に種があるとして。
もう少しばかりこんな関係を続けて、Z市から俺の住む部屋に同棲して…と段階を踏んで、ようやくこいつに挨拶しに行こうくらいは考えられる。
だが、古臭いやりとりなんて御免だ。
ジーナス博士は紙コップを1つ渡してきた。