第102章 100.暴かれる事のない真実の墓
「育てられない、生活が出来ない、邪魔…まるで犬や猫を捨てるように、親が様々な理由で要らなくなった子供を安く売り払い、おかしな人間が実験材料や召使い、性奴隷…武器の的。犯罪者に仕立て上げる。表面上では親が引き取ると言いながら、実際は金銭でのやり取りをしている、言わば奴隷商人だ。
戸籍のない子供達。死んでもバレない、探される事の無い人間だ。裏社会ではそういった人間は必要なのだ。
その子供達の中でハルカは大怪我を負って、満足な治療も受けられぬまま感染症も引き起こしていた。傷が塞がっても市販薬程度じゃ…あの風神のように痕も後遺症も残るわけだ」
「なんでそんなハルカを選んだんだよ、お前は」
子供がたくさん居て、実験材料とするのに一番弱っているやつを選ぶ。健康体こそ実験材料に好ましいだろう。
明らかに変わっている。言い方もあるだろうが…武器の的くらいにしかならない、処分されてもおかしくない。
「それはだな…ゾンビマン。生まれてすぐに捨てられる・売られるという悲劇の中で、あんな大怪我をして死にゆく様は、もしかしたら進化の家で運命を変えられるかもしれない、と思ったからだよ」
「意外な発想に辿り着いたものだな」
「自分でもらしくない発想ではあったが…。ハルカは在庫処分のように安く売られた。私は金には困っていなかったが…人間を売るにその価値の低さは異常だったよ。
人間とは馬鹿でも天才でも価値がある。それを含めて…ハルカはいくらだったと思う?」
突然の質問に考え込む。人質などは億で取引される事もある。また、高価な臓器などもある。何千万か、と考えた。それよりも安い…格安だと言うのなら。
「300万くらいか?」
博士は指を二本立てる。200万か、と納得しそうな所で博士は外れだと告げた。
「2万だ。臓器も才能も……それを含めてもあの子はたったの2万円だ。子供が子供を買えてしまう、その程度の価値だという事だ」
2万。人の命の値段をその程度に値付けされた事にもはや怒りを通り越し、ただ驚いた。
「想定以上に……安すぎないか?」
「言っただろ?瀕死だと。私がもしも次の日に孤児院に行ってたら居なかったかも知れないね、死んだにしろ処分されたにしろ」
「……」