• テキストサイズ

風雷暴見聞録

第102章 100.暴かれる事のない真実の墓


「希望の森。私はそこでハルカを引き取った」

「孤児院に行けばお前も知らない、あいつの個人情報残っているか?」

「どうだろうな。そもそも、もう孤児院自体が存在しないがね」

「…何?」

俺は今日、気軽にハルカの誕生日などを知ろうと関係者を当たろうとしていただけだった。
少しでもハルカについてを知りたかった、それだけだ。
経営悪化で回らなくなったのか、と思いながらも博士の言葉を待つ。

「大体、私のような者に簡単に子供を引き渡す所だ、"格安"で。想像はつくとは思わないか?」

「"格安"で、か?ハルカが雷に打たれて瀕死だったから、差別をされていた、もしくは傷物だからって事じゃないのか?」

「まさか」

博士ははは、と小さく渡って眼鏡を掛け直す。少しだけ前かがみになって俺側に顔を近づけた。
声を大きくしないように、ボリュームは控えめだ。

「あんな秘境に孤児院があるのがまずおかしいだろう。
ああ、君は場所を知らないんだったな、そこは置いておこう。
希望の森…、孤児院には子供達がたくさん居た。年齢もバラつきはあるが、義務教育すらも受けさせていない。怪我をしてもまともな医者にかかれない…意味は分かるな?」

想像がつく。
彼ら彼女らには身分が無いという事か。

「……戸籍が無いって事か?」
「そう、当たりだ。その戸籍の無い子供を私のような研究者が引き取る。そんな孤児院がボランティア精神でやっていると君は思うか?」
「思うわけが無いだろ…、法に触れる孤児院だったという事だな」

気軽に聞ける内容では無かった。
ここにあいつを連れてこなくて本当に良かった。そもそも誘っても来ないだろうが…。
ジーナス博士は続ける。
/ 318ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp