第102章 100.暴かれる事のない真実の墓
ザッ、と砂利を踏みしめる。風が吹いて枯れ葉が地面を音を立てて移動していく。
俺はトレンチコートのポケットに手を突っ込み、立ち尽くしている。その店員に話しかけるには、一般人が居るからだ。
あの忌々しい研究所はたこ焼きの家という気の抜ける店舗に変わっている。クローン技術での副産物…タコの足が大量生産出来るからと、たこ焼き専門の店舗を構えるとは。
しかも商店街に、だ。カモフラージュだろうと、周辺の人間に避難などして突撃した過去を思い出す。僅かに苦笑いが溢れてしまった。
「はい、ありがとうございましたー!
…あっ、ゾンビマンさん?ジーナス博士にご用でしょうか?」
たこ焼きを2パック買っていったおばさんを目で追い、ゴリラ…、アーマードゴリラ一人(といって良いのかは知らん)になる。新しく焼く為か、刷毛のようなもので型に油を塗っている。随分と手慣れているな…。
「ああ、ジーナス博士に用がある」
「でしたら、茶の間に居ると思いますが…、多分商品開発していると思いますよ?」
「あ?商品開発…?」
想像するは胡散臭い研究での怪人達。博士やハルカといったクローン。なんかの実験を世に放つのか、と思ったらそうでは無いらしい。
「たこ焼きの新しい味ですよ。是非とも試食していって下さいね~」
随分平和になったもんだ、と先程の想像をかき消して玄関へと向かう。
靴を脱いですぐ、外と同じ香りが漂ってくる。油とか、紅生姜の焼ける臭いだ。立ち止まっていた足を進めてたこ焼きの家に入った。
茶の間では家庭用たこ焼き器を机に置いて、ジーナス博士はアーマードゴリラが言ったようにたこ焼きを製造していた。
「おや、ゾンビマンか。何の用だ?」
「……聞きたいことがあってな」
向き合う形で座布団に座る。博士は手を止めずにくるくるとたこ焼きを回している。
新商品の開発だろう、床にトレイがあり、明太子だとかわさびだとかいろいろ載っていた。
「ジーナス博士。ハルカはどこの孤児院で貰ってきた?」
そう口にすると、博士は電源を切ってたこ焼きを弄るのを止めた。
それだけではなく、考え込むように腕を組んでいる。気軽に言えるものではないと確証した。