第100章 98.(過去のゾンさんの、元カノとの事情/裏)
※主人公と同名の女とヤッてる話です。地雷でしたら回れ右でお願いします。
何もかもを忘れたくなった。
進化の家から逃げ出して、あいつの手を握っていたのに。俺は守ってやれなかった。
この身体の再生力と、その守ってやれなかった悔しさをバネに、俺はヒーローとなった。やり始めたことは始めから全てうまくはいかない。
死ぬ行動でも俺は再生して欠損した部分を修復する。怪人を倒し、やがてはヒーローという職が生まれ、そこに属しながらも、助けた一般人に悲鳴を上げられる事はしばしばあった。
夜の街、重い木製のドア。
自身のコートには香水の代わりにたっぷりと煙草の煙が染み込んでいる。動く度に自分でも分かった。
プロヒーローになったとはいえ、今日も怪人と戦いながら何度殺されたか。どれくらいの出血をしただろうか。
泥仕合の末に得られた声は黄色い悲鳴ではなく。悲鳴を上げられ逃げ出される始末だ。
…そんなに俺が恐ろしいのかよ。
そう自身の中で閉じ込めた言葉ははけ口もなく、喫煙で誤魔化していた。
どちらかと言えば戦闘向きではないと自覚はしている。でも、目の前で助けを求める奴に手を差し伸べないヒーローがいるか。
ああ、そうだ。差し伸べた手も置いてきたんだったな。9歳の少女を思い出した。
77号…ハルカ。
あの手は小さく、一人ではきっと生きられない。もしもどこかで生きているのならは、16歳辺りだろう。青春真っ盛りを研究所ではなくどこかで生きていれば、の話だが。
もっと探せば良かったか?違う場所を探せば良かったのか?
自身で考えても答えは見つからず、やや薄暗いバーのカウンターに座る。