第99章 97.(童帝とパフェ/ほのぼの)
甘い吐息が香る。
『そりゃあ、好きだよ?』
「じゃあ、一緒にとりあえず住んでみなよ。ゾンビマンさん、とても知的でクールで、ハルカさんに関しては大事にしてくれると思うけど」
顔がとても近い。その状態でポポポッと赤くなる彼女は少し目を伏せる。子供の僕でもドキッとする仕草で、でもこの表情をさせたのはゾンビマンさんだ。とても好きなんだろうな、と僕は顔をほころばせてしまった。
『……好きだからこそ、無理かも。だってずっと一緒にいたら、心臓が保たないし』
「へぇ…でもそれじゃあいつまで立ってもハルカさん、名前を聞くだけで真っ赤になる状態じゃない?」
『ま、真っ赤になってなんか…っ、童帝くん、からかってる?』
左手の甲で右頬に触れて、自覚した眼の前の人は少しだけ怒りながら、底に沈むフレークを口に運ぶ。
面白い人だよなぁ、戦ってる時は"野生の獣を狩る狩人のように果敢に向かっていく人"なのに、と頬杖をつきながら僕はクリームソーダーを啜る。
「おー、おデートか?おふたりさん」
『ンン゛ッ!』
きっと路上を歩いていて、窓の外から僕たちが会話してるのが見えたからわざわざ来たんだろうな。ゾンビマンさんが僕たちのテーブルを前にして立っていた。
いつものトレンチコートのポケットに両手を突っ込み、少しからかうように。きっと僕との会話で全く気が付かなかったんだろう、ハルカさんは少しむせて口に手を当てて、大きな音が出ないように咳き込んでいる。
「ほーお…アイスティー、パフェ、キャラメルクレープ、木苺のミルフィーユにアイスコーヒー、パフェ、またパフェにクリームソーダーね。良く食うな」
「その最後のパフェとクリームソーダーは僕のです、ゾンビマンさん」
伝票内容を音読してもすごい量だ、とパフェの底まで発掘しきった彼女の顔を見る。豚神さんには負けるけれども食べ過ぎだよ…。
ちゃっかりとハルカさんの隣に座り、半分程減っているアイスコーヒーをグラスに口を付けて飲んで、渋い顔したゾンビマンさんはテーブルのガムシロップを3つほどじゃぶじゃぶと入れている。ハルカさんはあっ!と声を出して、肩を落とした。