第7章 5.
実験室から与えられた部屋へと向かい、ハルカを探す。といっても無邪気に笑うあの頃とは違い、笑顔の消えたあいつは自室に大体籠もっていた。泣いてる時はどうやって泣きやませるかに俺は頭を抱えた。そういう時は大抵側に居てやるか、そっと頭や背中を撫でていた。
時々部屋に行くと、博士のクローンが勉強を教えている姿を見る事もある。あの日はジーナス博士の姿は無く、ベッドに小さな山があるだけだった。
「ハルカ、寝てるのか?」
『……んー…』
寝返りを打ち、俺が居る方に顔を向けて僅かに虚ろな瞳を見せる。
電気のコードが寝具には目立って居る。時々ハルカから青白い光が放たれていた。
「ハルカ、凄く重要な話だから起きろ。こら、寝るな、起きろ!っつ、」
何度も揺すぶる。感電する俺になんともないハルカ。俺の手が焼け焦げ、再生と破壊を繰り返しながらもハルカを激しく揺する。ようやく、何?と言葉らしい言葉を発した。
眠いのは無理もない、ハルカも77号という別名を貰った研究対象。聞くに俺よりは酷い事はされていないようでも、雷のような高圧の電気を浴びせられたり、人口の鎌鼬を小さな身に受けていた。
痛みに泣き叫び、疲れて眠る。この日の眠そうなハルカの瞳は、赤く腫れぼったい。
「ハルカ、ここから逃げるぞ。俺が研究機材や怪人をみんなぐちゃぐちゃにしてくる。そしたらすぐにここに来るから、逃げられる準備しとけよ!」
『だっしつ…』
呂律が少し回っていなく、少し不安になりながら脱出だ!と言うと首を縦に大きく振った。今じゃ頷いたんじゃなくて眠さで船漕ぎでもしていたんだろうが。
外の様子は判らなくとも、時計と食事が出るタイミングとかで昼間なのか夜なのかは判別出来た。だから完全に夜になる前の黄昏時、その時間帯を狙って俺は実験室へ忍び込んで…。