第98章 96.(風雷暴の欲求不満の話 激裏)
余裕があればじっくりと選んでいたんだろう。
会えた事で余裕がない。少しだけは収まった昂りを抑え、さっさと本日のランチ(マルゲリータピザとサラダ、スープ、ドリンク付き)を頼み、もくもくと食べ(それでも本格的なピザとコーンスープが美味しかった)ドリンクのみの状態で見合う。
きっとゾンビマンに不思議がられているだろう。怒っているとも思われているのだろう。けれども、実際はそんな事はなく、会えた事で今にも爆発しそうなのだ。
「ハルカ」
『何?』
心配そうに少し顔を近付け、私の表情を覗き込んだ。
「なんか隠してるだろ?」
『隠してない』
「いや、おかしい。絶対に何か隠しているな。怒っているっていうよりも、これは何かを隠している」
『別に』
埒が明かない。そう察したゾンビマンは顎を掻く。視線を私からメニュー表のある場所に移し、手を伸ばした。
メニュー表を取ったわけではなく、シュ、と備え付けられた紙ナプキンを一枚。
「口に出せないなら書け、その方が良いだろ」
それでも僅かに身じろぎながら渋る私を見て、ゾンビマンが先に何かを書き出した。
そして私へと差し出す。
"電話越しの メチャクチャにされたい の事と関係があるか?"
どきり。隠し事が出来ないのではないかと思うくらいピンポイントだった。
その文字を見て見上げた両目を見、次第に顔が下半身が熱くなっていく。
そっと言葉を選ぶように、文章の下に私が答えを書いた。
"あの夜が忘れられなくて。 少しでも発散しようと怪人を倒していたら、その戦う時の興奮と相まって、我慢が出来"
そこまで書いた時だった。
目の前の男はガタッと立ち上がる。勢いがあったもので、手持ちの武器がガチャガチャとやかましい。
表情はとても険しく。まるで怪人を前にしたかの様。
『あの、ゾンビマンさん?』
「行くぞ。飯食ったしデートの続きだ、店舗を変える」
私を立ち上がらせ、書いてる途中の紙をライターで炙って燃やした。証拠隠滅だ。
黙ったまま、つかつかと急ぎ足で会計を済ませ、私の手を引いて店舗を後にする。後ろからきゃっきゃっとレストランスタッフの女性達の声。
街中では手を引かれずとも急ぎ足だった。私が来た方向へと向かっている。いつもよりも無言なゾンビマンに若干の不安を感じたけれど、その不安をかき消された。