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風雷暴見聞録

第98章 96.(風雷暴の欲求不満の話 激裏)


ゾンビマンと旅館に泊まった日から数日経った。それは怪人を狩った後だった。
終わっても気分は高揚したままだった。肩を上下し、呼吸が荒く。
なかなかに強い相手ではあったけれど、血が出るような怪我は無かった。少しだけ長引いた命のやり取りに昂ぶっていく。あっけない敵の死にその昂りは発散されることはなく。

言ってしまえば、興奮状態にあった。それは数日前の激しくもねっとりとした行為を思い出す。私は、私の体は彼を知ってしまった故に次の日も、その次の日も夜は求めてしまっていた。連絡をしたい、けれどもそんな私の卑しい部分を知られたくない。
毎夜、悩んでいた、だのに戦闘でストレス発散をしていた最中に、発散するものが死んだ。

欲求不満だった。

『(ああ、どうしよっ…!)』

携帯を取り出す。時間は11時。昼前だった。
ここは危険地区の中だ。先ほどの戦闘音は無かった事にされたように静まり返っている。
相手も同じヒーローだ。仕事中かもしれない。じゃあ、メールならどうだろう?

"今、暇?暇なら昼食いかない?"

短くも送りつける。
本当は食事よりも違う欲があった。でもそんな事ストレートに言えやしない。
"欲求不満だからセックスしたい"とかメールで送ったら正気を疑う。それでもゾンビマンは了解して勃起しながらすっとんでくるのだろう。
想像してじわじわと顔に熱が集まる。下半身もそれにあわせるように熱のような、欲を訴えている。

~♪

着信音、それに気がつくとすぐに通話モードに切り替えた。

「なんだ、昼飯デートのお誘いか?」

いつもの、すこし茶化すような口調で始まる。
安心と共に期待が膨らむ。身じろぎながら、片手で頭を押さえる。
ああ、早く。早くこの人に……。

『めちゃくちゃにされたい…』
「はあ??」


ひとり、誰も居ないZ市で固まる。
あれ、わたし、いま…?
携帯越しのゾンビマン。風の音やあらゆる人の話し声が聞こえる。遠くに走る足音、呼吸音。

「もしもし、ハルカだよな?」
『……』


心のなかで葛藤するあまりに声が出てしまった恥ずかしさで片手で再び頭を押さえ、悶えた。

『なんっでもない!気にしないで!』
「…あ?」
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