第97章 95.(フブキとタツマキと買い物する話)
やがて順番がやってくる。
カードを入れて、明細。ヒーローとはこんなに稼ぐものなのか。博士の所に居た時は勉強や知識は詰め込まれたものの、実際に買い物などお使いのような事はしなかった。
ゾンビマンからはぐれた後だってそう。貧乏というわけじゃない。そして、サイタマの所に行けば、安売りばかりを求める。
つまりは今までが高額なお金に出会ったことがなかった、というわけだ。そんな人間が大金を表す数字を目撃してみろ、怯えるから。
私は相当挙動不審だったらしい。
『(えっと、金額…下ろす金額…)』
ぎこちない動きで金額を押していく。高額な買い物なんてしたことないから、金額を知らない。
とりあえず限度額とされている100万を入力、下ろす。
機械でガタガタなにかが唸る。しばらくしたら溝に出てきたのはサイタマの読む漫画の厚さほどの紙たち。
びっくりした拍子にタッチパネルを指差したまま、放電をしてしまった。
バチィ!
周りの利用者が驚いた様子で振り向き、銀行員が駆け寄ってくる。
「お客様~!」
『す、すみませんすみませんすみません悪意はなく驚いただけなんです!』
「アッ風雷暴の…ううん、お客様、一体どうされたのですか!?」
一瞬目を輝かせた中年くらいのヤセ型の男性は気を取り直して言った。
私が使ったATMはお金が出ている状態でタッチパネルの部分が黒くなって消えている。というか、放電でイカれてしまっていた。
『その、知人と買い物するのにお金を下ろそうとしまして…』
私の発言を周りが静かに聞いている。が、私より2つ先のおばさんはこちらを見ながら、多分振り込み的な手続きを手際よく進めていた。
『大きな買い物をしたことがなく、ましてや、買いに行く服がいくらするかも分からないので…、』
ああ、恥ずかしい。
『限度額っていう金額で降ろしたら、初めて見る量のお金が出てきてびっくりして放電してしまいました、ごめんなさい!』
くすくすという笑い声。銀行員もスーツの袖て口元を隠して耐えようとするも耐えられず。
近くの、隣の若い女性が遠慮がちに手を上げた。