第96章 93.(ソニックと風神/音速で射止められた色)
「ワタシが…………だった……を、ナナジュウ、……ゴウ、」
「すまないが、風で良く聞こえない。風を吹かすのを止めてもう一度言ってくれ」
そよ風程度になる周囲。風神はフードをかぶった。
「行かなくては。ワタシの、大切な家族が、こっ…コウドウを始めタ」
またな、ソニック。
そういって風にさらわれるように風神は消えた。
──その双眼の宝石はまるであの一つの宝石を思い出させるようだった。
Z市の街の中、突如怪人が現れた。
Z市はそもそも、怪人が多く出現する。逃げ惑う人々の悲鳴が歓喜の叫びと変わった。
突如現れた女が、銃で怪人を殺める光景。その女は新人ヒーローだという。
はにかんだ笑みでどういたしまして、という姿にとある記憶がよぎる。
『すまないが、この辺にむなげやというスーパーがあると聞いたんだが…あんた場所が分かるか?』
話しかけられた声は記憶の声とは全く違う。
けれども、双眼の色ではっとした。あの色と同じだった。綺麗な宝石のような、瞳の色。
「……ああ、こっちの方大体100m程行って左の店だ」
あいつが、風神の言っていた77号ってやつなのかもな。
そう思いながら、俺はその場から去った。
俺が見たあの綺麗な宝石色に、また会いたい。テレビや雑誌で見るその色よりも惹かれる何かがあの時感じられた。
後日、もう逢えないんだなと確信して、配られた号外を握りしめた。
「死んだのか、あいつは」
俺の中に僅かに芽生えたモノと一緒に、シワだらけの号外を路面へと捨てた。