第96章 93.(ソニックと風神/音速で射止められた色)
赤黒く、崩れた顔の一部。片目付近と頭の一部が人間だ。しかも、女だ。
もう片方の目が潰れているのか、肉で埋もれているのか…あるのかすらわからないが、人間らしい一部の部分から覗く、濡れた宝石は俺の目を奪う。
「な、ナニいつまで見ているんだ、ワワワタシはミセモノじゃ、ないんだぞ…!」
指先を俺に向けるとパリッという音と痺れ。
「あ、ああ…悪かったな。あまりにも綺麗だったからな」
思わず飛び出た言葉にまずい!と思ったが、目の前のやつは少し首をかしげたくらいだ。
「キ、レイ……?」
その綺麗な目を見て、先ほどの事を深く掘り下げられないうちに俺は質問をした。
「お前は一体、ここで何をしているんだ?」
「お前、じゃない。ワタシ、風神。フウジン、と呼ばれていたけれど、も…なな、ナナジュウロク号とも呼ばれて、タ…」
風神。76号。どちらが本当の名前か、それとも本当の名前が無いのか。
俺は白フードを風神と呼ぶことにした。
「俺の名前はソニックだ。もう一度聞くが、風神、一体ここで何をしているんだ?
…ただのきまぐれで風を吹かせていたのか?」
本当は、どういった経緯でそんな姿になったのか、"どちら側"なのか、聞きたいことはあった。
でも、濡れた宝石が許してくれそうもない。
「………」
風の音がぴゅうっと鳴る。風神は暫くは黙っていたが、口を開いた。
「そう、敢えてい、言うなら、…使命」
風神は結構ぶっ飛んだ事を言うやつなんだな。突っ込む前に自ら語りだしてくれた。
「見守らなくては、いけない。未熟で、不完全な、ナナジュウナナゴウ」
見守らなくてはいけない?77号…?
喋る毎に風が強くなっていき、風神の言葉をどんどんさらって行く。