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風雷暴見聞録

第96章 93.(ソニックと風神/音速で射止められた色)


「押しのけたり止めたり、一体お前は何がしたいんだ?」

白フードとの距離は2mって所か。それでも目の前のやつからは殺気を感じない。
ただ、ぼうっとするように立っているだけだ。

「き、きまぐれ…ダ」

掠れたような…風邪でも引いているかのような声だ。特徴のある第一声を聞いた。

「ワタシは…カゼだ。きまぐれな、ソラのよ、ような…」
「きまぐれな、か…」

ここの所、天気がころころ変わる。10分程雨が降ったかと思えば晴れたり、良い天気だと思えばゲリラ豪雨になったり。
見上げた空は水色の中、ところどころに縁日に売られている綿飴にも似た雲が浮かぶ。ゆっくりとしたスピードで流れ、形を少しずつ変えていく。

見上げていた視線を白フードへと移す。
白フードは俺を見ていた。そのフードの中身が見えてしまった。

「ソソ、ソラはきまぐれ、だ…ワタシもソラのように、きまぐれ、ダカラ、殺すも生かすも……きまぐれ」

こちらを見ているから既に中身は見えていたが、自ら被っていたフードを外した。
にちゃあ。怪人のような、グロテスクな素顔。少し笑っただけで、顔の肉が裂けて出血を起こす。滴る血液が白いローブに落ちるも、シミを作らずに屋根へと落ちていく。
裂けた顔の肉は、裂けた肉同士がやがてくっつき出血が止まる。どう見ても怪人の類だ…

…が、顔の一部を見たら、そんな考えを吹き飛ばしたくなる。
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