第95章 92.(ジェノス/ファントムペイン)
疲れて眠るハルカを見て…そう、この時初めて発症した。
"ズキリ"
痛覚のないはずのボディから痛むような信号。コアの前に手を置く。痛みなんて無いはずだ、これは故障かもしれない。今度メンテナンスの際にクセーノ博士に伝えてみよう。
ハルカは風と雷を操る事が出来る。そうか、そんな力を生身で持つならば強いんだろう。
けれど、その力は無理矢理与えられた産物。進化の家の怪人共を数体見てきたが…酷い目にあった、とはどんな痛い目にあったんだろう。
"ズキ、"
先生に提案し、寝る時だけ隣に行くようにさせて普段は一緒に過ごす。
先生は少々考えてから「それ良いんじゃね?」と承諾してくれた。
災害レベル"虎"の怪人を相手にしたのは分かったが、テレビに映ったハルカの表情ははにかんだ笑み。
脳内がぼうっとした。最近、自分がおかしい。
"ドキリ"
ズキズキと生身でも無い体が痛む。俺の胸にはコアがあり、痛みなど感じない。
なのに、脳が錯覚しているというのか。認知機能になにかのエラーが出されたという事か。
ハルカが小さな火傷をした日だったか。俺の小さな痛みも酷かった。
ハルカが火傷をした時、遅くに帰ってきた時、そして笑った顔を見た時。
"ビクリ" "ドキ、" "トクン"
痛みや似たような感覚を感じた時を思い出し、こまめに先生に話す。
今はハルカのクローンについて、音速(笑)のナントカを探しに行く最中。
先生は凄い顔をしていた。引いている、というのだろうか?
「お前…鈍いの?」
「鈍い?それはどのようなパーツを付ければ鋭くなれるでしょうか?」