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風雷暴見聞録

第7章 5.


「お前は洗濯もあるだろうし、俺は先に上がったら部屋に戻ってるぜ。部屋はオートロックだから、ノックでもしてくれ。開けるからな」

男と女の大きな暖簾。その手前には小さな待合所があった。
老人夫婦が並んで飲み物を飲む頭上、壁掛け時計は4時15分を指している。

『ん、分かった』

頷きながらそう言って、赤い暖簾の向こうに私は歩を進め、湯を楽しむ事にした。
大きな浴室で時間を掛けて湯に浸かり、脱衣所で髪を乾かす。
大浴場はとても良かった。体や髪を洗う為の清浄剤が完備し、湯船は大きく、なんと室外にもあった。露天風呂は初めてで、川の水ではなく温かい湯に浸かって外にいるという事が信じられない。
今まで着ていた服を上着で包み、今着ているのは浴衣。ゾンビマンにどういう風にして着るとは教わったけれども、普段着に近いものできちんと着る事が出来た。
相棒である武器は帯紐の部分に差し込み、スリッパを履いて文字の反対になった暖簾をくぐった。脱衣所とは違い、空気がひんやりとしていて今は気持ちが良い。
廊下に出てすぐの待合所を見れば誰も居ない。時計は5時を過ぎたばかりで、早く洗濯をしておこうと服を抱えて部屋のある階へ向かった。

****


──77号とは久しぶりに再会する事が出来た。

現在湯船にゆっくり浸かってるであろう、同室の者を考える。
あいつに言った通りたまたま…、偶然が重なっての再会だった。
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