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風雷暴見聞録

第95章 92.(ジェノス/ファントムペイン)


わざわざ先生の住む部屋の隣を指定するとはゾンビマンにも呆れたものだ。隣の部屋はとてもすぐに綺麗に出来るものじゃない。
いっその事、焼却して綺麗にしてやろうか?と思うほどに何処から手を着けて良いか、悩んだ時間が多かった気がするが少しだけ掃除した頃に生体反応を2つ感知する。
そうだ、そろそろ食事の支度もしなくては。部屋に急いで戻り、準備を始めた。

本物のハルカは何かが欠落していた。
実際のハルカに逢って思った事。何かが足りない。

軽く自己紹介をし、『よろしく』と言ったハルカは笑いもせず明らかに埃っぽい部屋に入ろうとしていた。思わず、引き留めるように手を掴むがその手首は細い。簡単に折れてしまいそうで。

「すまないが、1時間ほどで掃除出来る部屋ではなかった。残念ながら部屋は今日は使えん。あとは明日やれば使えるだろう」
「おい、ジェノス!確かに隣の部屋の掃除は少ない時間じゃ無理があっただろうがよ、そしたらハルカ…俺達の部屋に泊まるって事だろ?いくらなんでもハルカは女だぞ!?」


先生が焦るのは、ハルカが異性であるからか。簡単ながらも夕食の準備は大体は済ませてあるし、その事を伝えれば先生は項垂れた。
一応は隣人を考えての接待のようなものだと言うのに、当の本人は『私は別に屋根があれば良い』と衝撃の発言をして、ゾンビマンの言葉を思い出した。

ジェノス、ちょっとコッチ。
先生が数歩先に行き俺を呼ぶ。ひそひそとハルカを遠くにして会話を始めた。

「やっぱり住まわせるべきだと思う?女の子だぞ、このむさ苦しい男2人に女子が追加されるとか重大イベントだぞ!?」

「しかし先生。わざわざ部屋を取り、世話代を戴きながらも野ざらしにするというのは……」

がっくりと肩を落とし、しゃあねぇな…と先生は折れた。
とりあえず共に過ごして見て思った事は…欠落しているモノ。それは感情だった。

白い白い、感情。何を考えているのか、読みとれやしない。
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