第95章 92.(ジェノス/ファントムペイン)
その痛みが起きた事を俺は遡る。
どれくらい遡るべきだろうか…?先生と2人並んで歩みを進める中、俺は思い出そうとした。
─ハルカ。
聞いた名前を検索すれば、…協会側は仕事が速かったらしくその名前が登録されていた。
俺が初めて見た顔は、ヒーロー協会の公式ホームページの新人A級ランクの女。
世間で言う一目惚れという類では無い、が…何か気になってしまった。わざわざS級ランクの者が、こいつを隣に住まわせてくれと頼みに来る程の者なのか?
玄関では、"一般的な世界を知らない"、"きちんとした家が無い"という情報が耳に入る。普通とは無縁の者。俺はノートパソコンを持ち出し、玄関でゾンビマンに確認した。
「情報早えーなオイ、」
持ってきたノートパソコンを覗くゾンビマン。それに釣られてサイタマ先生も覗き込んだ。
順位は今日成り立てだからか39位。他の色が交じる事の無い白髪に凛とした顔。顔服装や出る所を見るに何処からどう見ても女性。
先生は遠回しながらこのハルカという女が隣に越してくるのを拒絶した。
「そう言う事だ、先生は忙しいんだ。大体ヒーローだとは言え、女性がこの地区に住むのは良くないな」
何せこの者の実力は本当にA級のものなのか、定かではない。たまたま点数が稼げたとかそういうものかもしれない。
画像のハルカは真剣でもだらけてもいないが、瞳はどこか遠くを見ているような…生気の無いような雰囲気。見た目で判断するのは良くないだろうが、強そうには見えなかった。
この時は…はっきり言えば面倒くさい。足を引っ張られそうだと俺は思っていた。
短髪の頭をボリボリと掻いてため息を吐くゾンビマン。
そして新たな情報を漏らす。"孤児"、"養子となったハルカは親に酷い事をされた"、"逃げ出して当てもないのか、フラフラしていてやせ細っている"…
なにやら強制的にゾンビマンに押し付けられた感があるが、先生も受け入れたので俺も仕方なく隣人の為に部屋を掃除する。