第94章 90.本編最終回
「また、会いましたね!風雷暴のハルカさん!!」
ああ、驚いた。またこんな路地に入っていたのか。全く…懲りない男だなぁ。
『風神の力で怪人を察知したんだ。怪人を駆除するの、もともと趣味みたいなもんだし…』
「ああ、そうでしたね!ヒーロー協会は優秀な人材を持ったもんです。やはり、私の目に狂いは無かった!こう何度も助けられるとは、貴女に運命を感じてしまいま…
…あ、あのもう行くんですか!?」
熱弁するいつもの男性脇を通り、元来た騒がしい方へと向かう。
薄暗い路地裏よりも、今の私は賑やかな街の空を駆け回るのが好きだ。怪人の亡骸は協会に報告して回収して貰おう。怪我人も居ないみたいだし。
『ふふ、"私は私の気の向くままに。それじゃ、お元気で"』
きっかけはこの男性だったかも知れない。だから、あの時のように同じセリフを言えば、カメラを構えてカシャカシャと私を撮る。そして有難う御座いました、と嬉しそうに笑った。
背後からあの時のように「貴方の名前は?」という呼びかけは無い。もう、名乗る必要は無いけれど私は振り返り名乗った。
胸元のペンダントが跳ねて、再び肌に触れる。
──私は風雷暴のハルカだから、と。