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風雷暴見聞録

第92章 89.


『あんたこそ早く寝なよ、夜だからってそんなに元気になる事ないじゃない。私、もう疲れたし相手しないからね?』
「そんな事言ってる割に最初から最後までイキまくって、」
『いいから寝ろ』
「…チッ、寝れば良いんだろ、寝れば!」

腰に回された手と、頭上に乗っていたものが無くなる。
ゆっくりと手を下ろす私に再び手を触れた、と思ったら横抱きに持ち上げられる事となった。

「お月さんに見せるのももったいないんでな、お前も一緒に寝ような!」
『……はいはい。淋しがり屋に付き合ってあげましょう』

首に手を回し、頬に口付けるとだから口にしろ、口に、とぷりぷり怒りながら布団へと私をねじ込む。そして自身も入って掛け布団ときちんと掛けた。

『66号、』
「ん?」

気の抜けた返事。さっきちょっと空けた隙間からの光は、暗い部屋を照らすには丁度良い。
緋色の瞳は僅かな光を移してとても綺麗だった。

『好き。あんたの事、大好きだから、本当に本当に…私を離さないと嘘でも良いから、言ってくれる?』

今の私はとても満たされている。全身に幸せが詰まっているような、とても穏やかな。
こんな気持ちがいつか無くなってしまうのか、と思うと少し不安になって、確かめたくなる。

そんな不安な状態の私をゾンビマンは小さく笑い、そっと髪を撫でる。

「そんな嘘なんて言わない、俺は。ハルカの事、今度こそ絶対に離さない。俺はお前の事が好きだ。お前の事しかもう考えらんねぇ」

後で責任取って貰うから覚悟しろよ、と言われた後、掛け布団を持ち上げて顔まで覆う。

「おやすみ。続きは明日話そうぜ」
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