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風雷暴見聞録

第91章 88.


「……クソ、今夜覚えてやがれ」
『別室大歓迎だけど?』

いじけたゾンビマンにそういえば、気まずそうにそっと湯飲みを置いて「それは勘弁して欲しい」と、テーブルで頬杖をついて博士を見ている。
博士は少しすると紙を机に置いて、眼鏡を指先で上げた。

「ふふっ、君達2人はとても仲が良いみたいで安心した。進化の家と時から仲が良かった様だが…今はそれ以上か。
息子みたいなゾンビマンと、娘であるハルカが仲睦まじいのは良い事だ」

と博士は76号の入った箱を奥の部屋へと運び、10分ほどで帰ってきた。

「遺骨の一部を持ってきた。他の部分は処理に時間が掛かってしまうからね。今はこれを持って行きなさい、それから…」

くしゃくしゃになった紙を持って私に差し出す。これは君が大事にしなさい、と。
遺骨の一部をペンダントトップの中に封じ込める。小さなそれは骨に仕立てで暖かく、未だ生を主張しているようだった。
受け取った紙は折り畳んで、ポケットに突っ込む。生きろと願われ、助けて貰ったのだから私はもっと生きなくては。死ぬ事のない男が傍らに居るのも良いかもしれない。
そう思いながら、隣の奴を見ると目があった。

「仲睦まじいねぇ?そうだな。この後もデートだ」

「そろそろ行くか?」という問い掛けに、もうちょっと居ても良いんじゃないかな?と博士の方を見れば「またいつでも来ると良い」と優しく微笑んだ。まだジーナス博士の事は許せないけれども、少し心を開く事が出来た。
話も用件も済んだので、私達は外へと出る。
荷物はリュックくらい。お昼はたこやきの家から歩いて数分、最初に見付けたファミレスに入る事にした。

「うん?風雷暴のハルカとゾンビマンか。珍しいね、特にゾンビマンがファミレスに入るって顔じゃないのに」

白くてふわふわな毛の集合体。

お会計を済ませて出ようとしていた、番犬マンにばったり会った。お会計の時二本足でしっかりと立っていたのを見たけれど、ここは突っ込んではいけない。そう空気が語っているので、こみ上げた言葉を飲み込んでやり過ごす。そんな言葉を飲み込んでも空腹は満たされる事はなく。
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