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風雷暴見聞録

第90章 87.


「例えクローンであっても、風神のハルカと雷神のハルカは別々の意思を持った人間だ。どっちが元になった事だろうが、優劣決めても別の個体だ」

実際に76号も77号も違う行動はしていたし、生き方も違っていただろう?
そう言って急須を持つと再び湯飲みにお茶を注ぐ。

注ぎ終わった湯飲みを、ジーナス博士は私達の前に置いた。

『…その76号、風神が一昨日ヒーロー協会で亡くなった。例外だけど、遺体を譲ってもらえた。一応、彼女にとっても故郷はジーナス博士の元だから、今日はこれを、』

部屋の端に寄せた小さな棺桶に視線を移す。
博士は立ち上がって蓋を取り、覗き込んだ。
そんな博士を見て、私はポケットに入ったくしゃくしゃの紙を取り出し、広げて机に置く。文字は協会の者が書いた整った文字が並ぶ。

『風神が生きた証だ』

私が持っていた紙に書かれていたのはこうだ。


"10年前、逃げ出した時からずっと見ていた。遠くからずっとずっと、片割れの77号を。
77号という存在が出来てから、カメラや風越しに見ていた。逃げ出してもずっと見守ってた。護れなかった時もあったけれど、ずっと見ていた
けども、見守る役目を終えた。77号の大切な人が再び現れた
大切な奴、家、食事。沢山の存在から認められてるお前。私よりも劣った力で認められたお前が次第に許せなくなった
サイコスにある日出会い、空を貰う。先に支配していた天空族を配下にした。77号はヒーロー、ならば私はその逆になった。沢山の機械と人を壊した
本気で戦う77号は想像以上の力を持っていた。そこで思い出したのだ、私は。元々は見守っていただけだという事を
風雷暴、私のように道を反らさずに生きろ"

きっと、ゆっくりと言葉にしていたんだと思う。
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