第90章 87.
いつもは持ち歩かない少し大きなリュックを背負い、台車に長方形の箱を載せて出かける。
まずは行きながら目的のメモリアルグッズを扱うアクセサリー店。
想像していたのとは違ったらしく、少量をアクセサリーの中に入れるという物で、死亡したという日付を刻印してもらう事にした。
こちらの用は終わったので、以前行ったたこやきの家へと向かった。
しばらく移動して、例の看板を見付ける。台車をゴロゴロと動かしながらずっと移動してきたんだ、早く出ても時間には到着できなかった。
先に来ていたゾンビマンは店の前でアーマードゴリラをじっと見ているようだった。
『はい、お待たせっ!』
眉間に皺を寄せた男。
一方、鉢巻きをしたゴリラは「あ、ハルカさんだ」と呟きながらたこ焼きをコロコロと器用に転がしていた。
「遅ぇぞ、10分遅刻だ」
『ごめんごめん、お昼奢るからさ』
「そこは俺に任せろよ」
まだ決まっていないお昼の支払いを争いながらたこやきの家の自宅玄関に入る。
廊下の途中からひょっこりと、見慣れた眼鏡が覗き込んだ。
「賑やかだと思ったら…やあ、久しぶりだね。ゾンビマンにハルカ」
既に上がっているけれど、上がっていきなさいと言われ互いに顔を見合わせながら茶の間へと上がった。
以前来た時と同じ部屋。前のような緊張も無い。
最初に口を開いたのは博士で、「76号を止めたんだってね」とお茶を入れながら言う。
「なんでハルカの方がクローンだったと言わなかったんだ、お前」
急須の中のお湯が切れて、ポットから新しいお湯を入れる。
少し揺すって急須を一度置いた。