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風雷暴見聞録

第88章 85.


逃げ出した時から、風神は遠くから見守っていてくれたのだという。
10年間、ずっと遠くから。彼女は、進化の家に居た時からクローンの存在を知り、自分の力を良く理解していた。
護れなかった時も何度かあった(恐らく路上で寝ていて犯された時の事だろう…)

けれど、ある時その役目を終えたという。それは私の、彼との再会。
ゾンビマンと出会い、住む部屋を与えられていた。ヒーローとなって食に困らなくなった。そんな私を見て、役目を終えた彼女はどう思ったのだろうか?

次第に、見守るべき存在が妬ましくなってきた。
人々に認められ、感情を持ち、人と恋をする。そんな私を見て、風神は見守る事から一変し、自らの意思で行動する事にした。

サイコスという者に出会い、空を与えられ、先に空を支配していた天空族を配下にした。行動はエスカレートして、気が付けば関係のない人達を傷付ける行為に。

最後のあの戦いの時、見守っていた…そして見下していた私が風神を上回る力を発揮した事で目が覚めたという。そして、再び見守る行動に戻り…私を助けた。



静かなフロント付近で紙を片手に待っていた。
雷神である私は風神でもある。風神・雷神シリーズの2人は1人になり、風神の名をヒーローネーム風雷暴に刻む。彼女の分も生きなくては、を紙を握りしめると、クシャっと手の中で音を立てた。

しばらく待たされて、長方形の箱を持ってきた係。
私が彼女のクローンであるならば、恐らくは四十何キログラムの体重だったハズが、私の一撃で体の至るところが欠損して割と軽い。
係の者に台車を借り、お礼を言って、私は協会からしばらくは歩いた。

この遺体はどう埋葬すべきだろうか?
台車を押す手でパイプをぎゅっと握りしめ、とある場所へと進む。体に当たる風はいつもよりも優しく、ほんのり温かみがあるような気がした。
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