第87章 84.
私の手を取り、「風の力はちゃんと出るか?」と聞かれたので、風神の力を少し出せばゾンビマンの短髪が風で揺れる。ちゃんと回復したみたいだ。
『…うん、風神も天空族の厄介な奴らも居なくなったみたいだし、急いで行って戻るから』
「くれぐれも無理はすんなよ?」
分かってるって。そう言って私はゾンビマンの頬に口付けた。
「口にしろよ口に!」と文句を垂れる全裸男を背に、私は急いで服を買いに外へと飛び出して行った。
Z市の服を売ってる店の方向へ向かい、風神の力で駆けていく。雨は上がっているけれど、建物や地面には水たまりが所々あって風神の力で飛び上がるたびにビチャビチャと水を撒き散らした。
移動しながらゾンビマンから教えて貰った情報を思い出す。
──あの時、私は死を覚悟して落ちていた。
そんな私を助けたのは、いつの間にか来ていたタツマキだと私は勘違いしていたのだけれど…実際私を助けたのは私。
死を覚悟した私に変わって、死ぬ寸前だったもう1人の私こと、76号"風神"だったという。
何故?彼女は助けるような素振りは無かった。殺す気があって戦っていたというのに。
ゾンビマンに『そんなワケがないでしょう?お互いに殺す気で戦っていたのだと言うのに』と私は言うと、「風神が最期に言った言葉をお前は覚えているか?」と確かめてきた。
最期の言葉……。
"ナナジュ、…ナゴウ、オマエはヷダジ…からホント、良いトコロばかり…"
"敗者は去る…。オ前は人として、生きれば…良い"
……。
「風神は自分の負けを認め、お前の幸せを願ったんじゃないか?」
『私の……幸せを、願う…?』