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風雷暴見聞録

第86章 91.(激裏 83~84の出来事)


思い出すと寝込みを襲われた時や身なりの良い男と寝た時のような、這い回る手と舌を思い出して身震いする。両腕で胸元を隠す掛け布団を抱きしめた。

そんな私の肩に温かい手が触れた。
振り向くと眉間にまた皺を寄せてるゾンビマン。

「俺は構わねぇな。おまえのどこが穢れてるんだか知らねぇけど、」

肩から離れた手は、腰を叩く。痛い!と言う程じゃないけれど、素肌だからかパチンと良い音が鳴る。

「お前が倒れてる内に、俺の血とか拭きつつあちこち見させて貰ったけど、どこもかしこも綺麗じゃねぇか。それに俺はユニコーンじゃねぇ。処女厨じゃねぇからンな事気にしねぇよ。
そういう俺も、風俗で発散した事もあったし…」
『風俗行くなし…』

…今の状態でも恥ずかしいのに、更に恥ずかしくて全身の血が沸き立つような感覚。
そっちが気にしなくても私は気にするよ、キスも、交わる事も初めての相手は好きな人じゃない。凄く申し訳ない…そう、罪悪感っていうのかな…。それでも、ゾンビマンはそんな私を選ぶんだろうね。
ベッドの上で膝を立て、抱きしめた掛け布団に体を倒す。体育座りに近いこの体勢じゃゾンビマンは視界には入らない。彼は優しすぎる。その優しさが悲しくもないのに涙腺を緩ませた。

うん、と頷いて私は顔を上げる。掛け布団を抱きしめるのをいい加減にやめ、掛け布団の変わりに隣の男にそっと抱きつく。体勢が少しキツいから、私の膝がゾンビマンの太腿に触れた。

『それじゃ…私の身体の事、あんたに委ねる』

素肌同志が触れ合うというのはこんな感じなのか。服を着ている時よりも密着しているという事実を肌で感じる。
なによりも私と触れる他人の肌は、今誰よりも愛しい人。いつもの煙草の香りはしないけれども、この体温が先ほど感じていた罪悪感と隙間を埋めてくれる。
私の髪を掬い上げる手に顔を上げた。顔の横でゾンビマンが髪に口付けて、私に笑いかける。手から落ちた髪がサラサラと私の腕に掛かってひんやりとしている。

「そんじゃあ、戴きますかね」
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