第86章 91.(激裏 83~84の出来事)
私が殴った男は殴られた場所をさする。殴って当然だ、必要なものは避妊具じゃなくてまずは服だろうが。
だというのに全裸で!倒れた私を抱えてF市からZ市まで移動中に!服ではなく避妊具を買ってる時点でおかしい。確信犯だと見た。こいつ自身全裸、そして雨でびしょ濡れの私を裸に剥いて両者ベッドに入っている。
一応恋人だし、別に既成事実作らなくても…とも思ったけれど、更に考えれば私がゾンビマンに心を開いたあの日、何処を触ってきた?剣術を教えるって時もそんな感じだったな。
「……安心しろ、店に入っちゃ居ねぇよ。薬局の自販機で購入した」
私が考えてた事とは違う事だと思ったらしい。そりゃ全裸で女抱えた男がコンドームなんか買いに来たら通報モンだわ。
違う意味で苛つく私はふと、ゾンビマンの服装事情でピンときた。
『ん?待った。全裸なのに財布…?』
「それは、まあ…ハルカの財布からだな」
資金源は私か!
ああ、どこからつっこむべきか。
突っ込む順番を考えているうちに急いで部屋の鍵を締めに行き(全裸で)、目の前で箱を開封し始めた男を見て馬鹿臭くなってしまった。
はぁ、と大きなため息を吐いてドヤ顔をする男を見る。
「丁度あの2人出掛けるってんならまたと無いチャンスだぜ?」
片手で掛け布団を押さえ、もう片手で額に手を当てる。前髪がほんのり湿ってる。
カサカサと薄手のビニールを弄くる音が聞こえる。退路を断たれた感じだ…この空気といい。
丁度良く、出かける準備を終えたらしい隣人のドアの音も聞こえたし。
『…本当に私なんかで良いの?初めての相手が66号じゃなく、7番目って事だよ?』
といってもどいつもこいつも好きでもなく無理矢理だったり交換条件だったけれど。
昔の記憶を思い出して視線を逸らす。何歳だったか、結構昔だったな…。寝込みを襲われたのは。
自分からっていうのは、売春っていうよりも…食事も風呂もベッドも使わせてあげる。けれど、交換条件に君と一夜を共にしたい、と言われた…わりと身なりの良い男だったか。
添い寝くらいだと思ってホイホイ着いていったのが運の尽き、食事も風呂も済ませて良い思いにさせてからのどん底だった。ヤケに痛かった、ヘタクソだと思ったな。世の女性は男狂いになる理由が全くといって良いほど分からなかった。