第83章 81.
"今度は私が、あんたのヒーローになるから。"
何度も救ってくれて、沢山のものを与えてくれたゾンビマン。
私に今出来る事は、負傷した彼を休ませて目の前の敵を倒す事。
「……期待、しといてやるよ。ヒーロー」
隅っこの方に居なよ、とフェンスの角を指差し風神に向き直った。
空は時間の割により暗く、雨粒が落ちてくる頻度は増えてきていた。血溜まりにサークル模様を描く。そして空気を振るわせるように唸る音。
そろそろか。いや、いつでも行ける。きっかけさえ、合図さえやれば。
「ロクジュ、ロクゴウを切り裂くのも、あ…飽きていた所だ。さっさとオマエをシマツして……かか帰らせて貰お、かな」
風神が一度頭を掻く。そして両手の掌を胸の前で合わせ、そっとコチラへと掌を向ける。
大きい何かがくる。地響きがする。あらゆるものが、壊れてしまいそうなくらい。
ゴゴ、ゴゴゴゴゴ…ォォ
音を具現化するように目の前に竜巻が発生した。
風神が作り上げた竜巻。風は渦巻いて上空の方まで続いている。それを複数作り上げて腕を組んで私を見ている。
手を向け、私の方に近づけないように風を送るもあまり効果は無さそうだ。地面に接する部分に近いほどに物を破壊する力は大きそうで、複数の物が一つに取り込まれる度に、引き寄せる力が強くなった感じがする。
この位置で取り込まれたら体はミンチと化す。地面の血溜まりを吹き上げ、血しぶきを撒き散らす竜巻から距離を取る。ゾンビマンの血液が風ではねて私の白地の服に付いていく。幾ら逃げても追う竜巻には意思があるように私を追尾した。
これは…風神を叩かなくてはならない。走りながら空を見上げる。
あんたが風を操る風神ならば、私は何だ……?
ニヤリと私は笑みを作って少しだけ屈む。
『今から私とあんたのトラウマを引き起こしてあげる。死ぬかもしれないよ、風神?
でも私、あんたに聞きたい事があるんだ。今生きてるようにしぶとく生きてくれないかな?』
「て、手加減と言う、コト、か?ふ、ふざけやがっ…て!」
振り返ってゾンビマンと目が合う。
『ごめん……とばっちり受けると思うけど、先に謝っとく』
「はぁ?」
再び前を向き、床を蹴って飛び上がる。そろそろ安全そうだと竜巻の中に入った。