第82章 80.
「こっちは3人でも十分だよ。風雷暴のハルカは風神の所に行ってゾンビマンを助けてあげて。恋人、なんでしょ?」
にこりと童帝が笑った。
成長しつづける少年から大人の一面を見たような気がする。その言葉に背を押された気もする。
『……っありがと、童帝くん。それじゃあ、こっちの4体は皆に任せる。私は上の方へ戻るから、よろしく!』
カシャンガシャンという小学生が立てる音じゃない歩行音を背中で聞きながら、私は屋上の床を一蹴りした。
何もない空に突き進み、なにやら一方的にやられているであろう屋上を見た。豆粒ほどでも戦況が分かる。
その屋上に向かい私は落ちていく。落ちていく程に屋上全体が悲惨な光景と化しているのが分かる。
赤、赤、赤。そして紐状の赤。赤に浮いた白、骨や脂肪分。
それらの持ち主は体から蒸気を出し、足りなくなった部分を再生している。
今も風神による攻撃を受けて、新しく屋上のコンクリートを赤で染めて上げている。
着地する手前で風を出し、着地に成功。
風神の方に視線をやる。攻撃する手を一度下げニチャリと気味の悪い笑みを作っていた。
「ま、まさか…もう、天空王、と…シテンノウをしシマツしたの、か…?」
『私はあんたと違って、道具じゃなくて頼れる仲間が沢山いるからね。今、こうしてるうちに2体くらいお亡くなりになってるんじゃない?』
ちらりとゾンビマンの方を見る。
酷い有様だ…。床には腸とか飛び散ってるし、軽く3人分くらいの血液は撒き散らしてるんじゃないかとは思う。
それよりもなによりも…なんでまた全裸なのかが問題だ。
『…ねぇ、なんで66号全裸なの…?』
以前、私に見られているからか、隠す素振りを見せずそのままあぐらをかいた。
「仕方ないだろ、真空刃だか鎌鼬だかで切り裂かれちまったんだし。これは不可抗力だ」
『服着なよ…』
「ねぇよ…」
帰りどうするんだろう?タオルでも借りる?また私の服着る?
ああ、もう仕方のない男だ。それでも私が来るまでずっと相手していたんだし、悲惨なこの光景を見るにとても悲痛な思いをしたには違いないんだろうから。
『今度は私が、あんたのヒーローになるから』