第6章 4.
──30分以上は経った頃。
する事もなくて残りのバナナ3本に手を付け始めた頃。ようやく真新しい服を着て私の服を肩に掛け、くわえ煙草をした追い剥ぎヒーローが姿を見せた。
今の私はどんな表情をしてるのだろう?ゾンビマンは目が合って第一声に「その……すまん」と謝ってきた。更に無言で上着と帯を律儀に私へと着せる。
「そんなにキレんな、仕方がなかった事だろ。
それよりも服を借りた恩もあるから宿泊費は俺が持つ。明日ヒーロー認定試験を受けて、その後明日から住む場所に案内してやる」
よくもそんな時間で服を調達して、手続きが済んだものだと手際の良さに感心をする。
煙草を手に持ち、ぺらぺらと相槌を打つ事を許さずにゾンビマンは話を続ける。
ああ、木の枝をくわえていたのは口が寂しかったのか。納得した。
「ジーナス博士にどれくらいかは知らんが教育はされてたみたいだからな。それだけじゃ不安だしある程度は俺が助言してやるから、ちゃんと覚えろよ」
『お、おい…』
私の話を聞く事なく、ゾンビマンは更に続ける。
今までで一番喋っているんじゃないかと思うくらいに。
「試験は筆記と体力、それぞれ50点満点で最終的に合計70点以上が合格だ。なるべく早く受けた方が良いと思ったら明日だと聞いてな、俺が頼んでお前も受けられるようにしてもらった。ハルカなら悪くてB級、良くてそれ以上って所だろ、S級ランクまで行ったって不思議じゃねぇ」
不思議なのはその行動力だよ!とも言わせて貰えず、自身はS級ランクだの私の力なら余裕だの表情を変えずに話続けた。
一度捨てたバナナの皮を拾い上げ、止まらない話をし続けるゾンビマンの顔面に投げ付けようとしたら避けられた。そして話も止まった。
『とりあえず、私の、話を!聞け!』
言葉を区切ってそう言えば、ああと頷いた。
よし、黙らせる事が出来たな。まず何から言うべきか。