第6章 4.
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あと数mで森を抜ける、という所でゾンビマンに肩を掴まれ「待て」と歩みを止められる。
一体なんだ?と振り返れば、視線も合わせる事なく口をもごもごさせ言い辛そうな様子。
「あー…ちょっとお前のその羽織ってるやつ貸してくんねーかな?その下は下着じゃねーだろ?
俺は下着すら無ぇから通報される」
確かにその通りだ。私じゃなくとも、街中で遭遇したら悲鳴を上げて警察を呼ぶ。それか取り押さえるだろう。
だからと言って貸せば良いのか?それも微妙な所だ。性別や体格もあり、ゾンビマンよりサイズは小さいだろうし、僅かな可能性だが全裸にこの上着ってのも通報されるレベルだ。
それにこんどは私が黒のタンクトップに丈の短い、下半身に密着する生地の…スパッツというんだっけか?そういったものでうろうろする事になる。痴女と言われてもおかしくない。
いや、それよりもゼンラマンの素肌が私の服に密着というのも宜しくない。特に下半身。今もなるべく視界に入れない様に注意をしているのに、お構いなしで一歩進む度にぷらぷらと存在をアピールしてくるそいつが私の服にペトッ!とくっつくのだ。宜しくない。非常に宜しくない。
断る気満々なのを勘付いたのか。ゾンビマンはため息を付いて、仕方ねぇ…と覚悟を決めたようだ。全裸で挑むのか。ならば私は関係者じゃないと逃げる事に徹しよう。
……と、行動を起こす前にゾンビマンは再び私の肩を掴んだ。
「ハルカ。お前は ここに居ろ。…な?」
ああ…、逃げるな、俺1人で挑むからというやつか。そう思った私の考えは非常に甘かったらしい。
事も有ろうに、私の腰回りに手を這わせるゾンビマン。
『…っ変態は変態だったか、見損なったぞヒーロー!』
「取って食わねーよ、服を借りるだけだ」
両手でその手を掴んで止めようとしてももあまり効果はない。這わせた手は私の簡単な帯を掴み、そして外し、上着が剥がせる状態になればそれを身に付け始めた。
少しピチピチして、ポロリしないように気を付けながら30分以内に戻ると言って急いで街へと進んでいった。かろうじて下半身は隠れても見た目はアウトなので通報されるレベルが全裸よりは下がった程度ではあったが…。
『あンの野郎……』
承諾も糞もなく、強制的に待つという事になり日陰という事もあって寒さで自分を抱きながらゾンビマンが戻るのを待った。