第80章 78.
両手に拳銃。
前方に向け、トリガーを引くと打ち出す音と反動が体に来る。素人ではない、全弾を外すような奇跡なんて起こす運なんざ持ち合わせていないが、風神に確かに打った弾は屋上のコンクリートにボトボトと落ちている。
風で打ち落としたのか?超能力を使って戦うタツマキや、風を操る時のハルカの様に風神も手をこちらに向けて居た。
遠距離攻撃は銃くらいなんだけどな、と銃口から出る僅かな煙を見つめ、2丁とも仕舞う。
「その程度か、ヒーローというのは…大したこと、が…なな無いな……」
風に押されて落ちた弾丸がカラカラと音を立てている。風神は片手で自らの頭を抑えて小さく笑った。
しゃがんで拾う事もなく、小さな竜巻を発生させてそれらを手に入れた風神。
「オ、オマエのものだろう?返して、くれてヤルヨ」
風神の掌から俺の方へと風が吹く。フェンスに寄りかかるほどじゃないが、複数の痛みを体中に感じた。
手を腹部にやればなま暖かいものがぬるりと染める。視線を掌に移せば嫌って程見てきた、俺の赤。
「ゴフッ、…はっ」
死ぬ事の無い体とはいえ、痛いもんは痛い、内臓の損傷があれば出血だってする。
返された弾は肺にでも当たったらしく、口から血液を吐き出した。
あーあ、煙草…もったいねぇな。吐血と一緒に俺の血溜まりに煙草が落ちているのが見える。
やれやれ、運動は嫌いだが。
こいつを始末するには、動かないわけにも行かないようだな。
傷口から煙と、めり込んだハズの弾丸をポロポロと床に散らかす。これくらい簡単に治るってもんだ。
「風神、俺と戦うのには泥仕合になるが……覚悟しろよ?」