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風雷暴見聞録

第80章 78.


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宙に投げ飛ばされたハルカはすぐに戻るみたいな事を言っていたが、そうはいかないみたいだ。
この高層ビルから見える、低いビルの屋上。そこでドンパチやってるのが見えた。こんな遠くじゃ何も出来やしない。無力さにフェンスを掴む力が増した。

「オマエ、ナナジュ、ナナゴウに番号で呼ばれてい…いたな…?」

進化の家出身か?俺の後ろで風神は言う。
ハルカも心配だが、A級からS級にスピード昇格したあいつだ。0の状態で前日勉強させて合格もした。少なくとも戦闘能力はS級として問題ない。
ここはハルカが戻ってくる、と信じよう。
俺はコイツを相手にする為、振り返った。

「ああ、俺はゾンビマン。進化の家では66号と呼ばれていたな」

コイツがハルカのオリジナルか。身長も横幅の確かにハルカと同じくらいだ。
違うと言えば露出した肌が赤黒く爛れて居る事。頬の一部には肉が足りないのか、ヒューヒューと空気が漏れている。そのせいか、それとも喉がやられてんのか…話し方が独特だ。

あと、頭部の一部から片目までが健康的な肌色をしていて、その片目は俺が見慣れたアイツの目と一緒だ。一緒だけれども、違った。
俺を見上げる時の、笑う時の、照れた時の、変態呼ばわりして蔑む時の…そういう見慣れた目じゃない。怪人の目をしていた。

なんというべきか…支配、絶望、殺意といった、あまり良くないそういった黒い感情。片目からそういった負の感情が滲み出ている。オリジナルにして、本物のハルカじゃないな、と俺は鼻で笑った。

「なにを、わっ…笑っている?」
「お前がオリジナルってのが嘘くせぇってな。俺にとってのハルカは77号であり、雷神であり、風雷暴と皆に呼ばれている、後ろで戦ってる女だ」

コートのポケットから煙草を一本取り出し、箱を再び突っ込む。そよ風だからライターの火もすんなりと着けられた。
朝家で吸ったのが最後だったな。肺一杯に吸い込んだ煙を吐き出す。

「俺にとっての本物のハルカは77号なんでね。風神、始末させて貰おうか」
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