第79章 77.
風の音が聞こえない。
そよ風すらも吹かない。まるで静止画のような光景だった。
「何を言ってるんだ?お前」
安全装置を外し、銃口を風神へと向けたままゾンビマンは説明しろ、と続ける。
「簡単なコト。
アチコチに居るオマエの仲間を、ワタシのなな、仲間が潰しに行ってるんダヨ…フフ、」
組んでいたのは本当の様だ。
でもここには風神しか居ない。
『風神。あんたは天空族と連んでいるってのは知ってる。ここはアンタだけ?
随分とまあ、私達はなめられたもんだね』
S級ヒーローがこの作戦に参加してる。それも2人ずつ。
他の場所はあまり心配しなくて良さそうだ。彼らも通常のヒーローとかけ離れた力を持っているのだから。
「ウウウ、な、なめられた?ク、ククク…ワタシ1人かとオモッタノ?」
こちらに視線をやらず、ゾンビマンは風神を警戒したまま。
「ハルカ、何処かにあいつの仲間が潜んでるかもしれねぇ。気を抜くなよ」
『分かってる』
返事をして私も銃に手を伸ばす、が。
実弾の無いこの銃だ。風を飛ばすんじゃ効かないかもしれない。私は抜かぬまま脇差の柄を掴んだ。
「ナカマ…?ワタシがナカマと思うの、ササ、サイコス様だけ。他のはミンナ……道具だ」
手をコチラに向けた時、無風だったこの屋上に突風が吹いた。
「ミカンセイな…ワタシのそっくりさんは、落ちて死ね」
『……ぐっ、』
この前の時の様な突風。柄から手を離し、後方に出来るだけ風を吹かして飛ばされない様にする。
ベンチと共にゾンビマンはフェンスにガンッ!とぶつかったのを見た。
『ゾンビマン!』
「俺の事はいい!お前は前を向け!」