• テキストサイズ

風雷暴見聞録

第77章 75.


ひび割れて老化したアスファルトを走って、時々立ち止まって場所を探る。
幾らか移動しているようだな。再び走り出す私を誰かが呼ぶ。

「おーい、風雷暴の!」

ふと呼ばれた頭上を見る。随分と高いビルの屋上に誰かが居る。
確か、昨日見たな…

『シルバーファング?』

そうじゃ、と上の方で聞こえた。
別に急ぎでもないし、ビルの屋上くらいジャンプして上がっても大丈夫だろう。そう思った私は少し腰を下げて風神の力で飛び上がる。
上ほど風が強く、ビルの真ん中程から下から吹き上げる風が来る。調節をしながら屋上の上に着地した。

屋上にはシルバーファングとアトミック侍が居る。
昨日はサイタマ達がZ市だったから、今日はこの2人か。

「お主、今日は作戦の日じゃないじゃろ?何故この辺うろついておるんじゃ?」
『ええ、確かに私は今日ではないですよ。腕が鈍らないうちに何戦かしておこうと怪人を捜していた所です。
それに住んでるのもこの危険区域ですし…』

今日の風が強く、髪が顔に掛かる。
かきあげて掛からないようにした。さっきの事を思い出して、敵は風神だけじゃないという事も伝える。

"敵は風神以外にも、天空族という者達が居る"という事。それから四天王という存在もある事。
協会から新情報として、きちんとした連絡が伝わるとは思うけれど。

シルバーファングは了解、と言って頷く。そして。

「ワシの事はバングと呼んでくれ。ほれ、長いじゃろ?」
『…はい。では私も風雷暴というのも長いんで、ハルカと呼んで下さいな』

バングさんはよろしこ、と言って手を差し出す。静電気が出ないように気を付けながら、その手を握って宜しく、と握手をした。
…シルバーファングは見た目より茶目っ気のある爺さんだなぁ。

『では、風神と追加で天空族に注意してください』

アトミック侍にも一礼をして、私は道路を見下ろし、飛び降りる。
乱れた気流の中、バランスを取って落下速度を落とす。怪我もなく着地して、向かっていた方向へ再び走り出した。
/ 318ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp