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風雷暴見聞録

第76章 74.


ドンッという音と共に放たれた者は今は誰も住んでいない民家や店へと放たれる。
ガラスが割れる音と瓦礫の落ちる音。私には掠りもしない。

右手に脇差を持ち、指先に電気を流し込む。バチバチッと音を立てた。
電気が雷という名称に変わる一歩手前。昼間でも明るすぎる青白い雷光と出力が大きくなりバリバリと五月蠅いくらいの音を立てる手元の刀。
切っ先を向け、私は一歩踏み込んだ。

「成る程、成る程ねぇ!…ははっ」

焦った表情になった目の前の怪人は攻撃を仕掛けるよりも私から逃げ回る。脇差は60センチ程の長さ。左手に愛銃を持ち、そちらにも力を込める。
近かろうが遠かろうが、コレで対処は出来るな。
空振りした一降り、隙を見て銃でプラズマ弾を腹部にぶち込んだ。風神の力で開けられた穴、そして腹部の内側から放電され大の字で地面へ落ちていく天空族の者。

そのものの元へ近付き、脇差を向けたまましゃがむ。

『…で?誰を捕まえるって?』

「は、はは…流石、風神と対になる…雷神……」

せめて楽にしてやろう。
両手で柄を持ち、切っ先を真下、胸元に向けて突き刺した。
体全体からパリッ、バリッという音を鳴らし、跳ねるように痙攣をして息絶える。
武器を仕舞って携帯を取り出し、私は報告をした。入手した情報、そしてZ市の危険区域にその天空族の遺体がある事を。

****

最近感じる気配はコイツだけじゃないな。
もしかして複数ある気配は天空族のものなのかもしれない。地上には人間が居ないし…地下にも何か居るかも知れない。風が届かぬ地下。でも本能的に感じる、何かがうごめいている。
けれども風神が空の怪人と組んでいるというのなら、地底よりも空が怪しい所。

協会の者が来たようで、天空族の亡骸を渡した。

『回収ご苦労さんです。では私はこの辺で』
「風雷暴さん、いつもお疲れさまです。お気を付けて」

しかし人力車で来たのにはびっくりした。まあ、危険区域に車で来る事は出来ないだろうってのは分かっていたけどさ。

流石に墜落事故が起きている中でのヘリを使うのは控えるんだろうな、それじゃあどう来るかとは想像はしていたけれど。協会の者2人と用心棒なのかA級ヒーローが1人。
怪人の死体を1つ回収するのにわざわざ大変だろうな、と思いつつ私は進行方向へ風を起こして走った。
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