第75章 73.
普段行かない方面の方が近いという事もあり、その方向へと風神の力でスピードを上げながら走る。
あまり高い所に立つのは控えたいけれど、危険区域内で戦闘をしたのか、ビルが道を塞ぐように倒れている。これは仕方ないか。
足裏から風神の力で飛翔する。倒壊して道を塞ぐビル、地上から4m程だろうか?
その頂に足を着け、少し遠い反対側の地面を見下ろした時だった。
風に含まれた誰かの臭いを感じ、気配のする方向を振り向く。
「それは…風神の力では……」
人間じゃない。そいつは分かった。
大きな翼を持ち、足は鳥のようだ。けれども腕は人と同じ構造。絵に見る天使ではないとハッキリ分かる。声からして男。
ああ、確か…ハーピーという空想の世界の魔物に近い…ような気がする。
『風神を知っているのか、お前…』
ごくり、と飲み込む音が聞こえる。
距離は近い。互いに倒壊して寝そべるビルの上、間は2m程。
男は警戒している。勿論私も、風神関連だと悟り警戒している。
「貴様は何者だ?何故風神を知っている?」
すぐに攻撃する気配は無い。警戒はしているけれど、単純に情報を知りたいみたいだ。
こちらも情報が知りたい。それまでは、駆除はしないようにしないと。
私の指先が小さくパチッと鳴った。