第74章 72.
いつまでも答えない私に、サイタマはトドメを刺してきた。
「ちゅ、…あ~…キス(小声)はしてるもんな?昨晩変な声無かったし、やっぱ昨日の昼間は…ははあ、昼間から…?」
『しっ、質問に答えるけど!私とゾンビマンはそういう、に、肉体敵的関係にはまだなって無いし!本当になってないし!』
机に俯せになりたいけれど、まだジェノスの質問が残っている。サイタマの段階で答えるのに勇気の要る質問が来るとは…!
恥じらう様子なんて視界に入っていないんだか、わざとやってるんだか分からない。
「え、そうなん?これまでにあいつと2回くらいは合体してそうだったからつい」
『つい!?』
語尾に笑い声が付いてた。楽しんでいるな…これ、わざとだ!
「俺の番か。そうだな…」
ジェノスの番が来たら罰ゲーム終わりだ。ええい、何でも良いから早く!
どんな質問が来るのか、その人工的に作り出された瞳を見つめて急かす。
「何故、あいつが好きなんだ?様々な武器を扱うとは言え、お世辞にも強くはない。それに色んな意味でモザイクが似合うような男だぞ?ヘビースモーカーでもある」
『何故、ねぇ…?』
あれ、いつからだったっけ?
初めてあった時…じゃないな。再会した時?思いっきり攻撃してたしなぁ…
記憶を遡っていく。
──そうだ、思い出した!
思い出した途端にあの時、あの場所の言葉が脳内で再生される。
私が誰にも必要とされていない、愛されていないと言った時、私を必要としてくれて愛してくれているのだと、私をしっかりと抱きしめて言われた時。
その時までにもやもやとした何かがあったかも知れない。けれど、その時に自分に似合わない堅苦しいモノを全て脱いで初めて素の自分になれた気がした。その時から私は本格的にゾンビマン、あんたの事を…。
ああ、全く。私の負けだよ。
机に突っ伏して顔色がえらく変わらない内に隠した。