第73章 71.
「じゃあ、明後日な」
『ん、明後日』
部屋の前で一度、互いの背に腕を回して数秒抱き合って離れる。
来た道を帰っていく小さな姿をその場から目で追っていると、サイタマの部屋のドアが開いた。
ジェノスだ。
「随分遅くなったな」
『ん?まぁ、乗ってたタクシーが帰宅ラッシュの渋滞に巻き込まれてね~…』
視線をさっきまで送っていた場所に移せば既に見失っていた。完全に暗闇に溶け込んだ彼を見送った後、私も部屋に入る。
ずっと暗い場所であったから、部屋の明かりはとても眩しい。そして暖かい。
「帰ってきたなら早く飯食おうぜー」
サイタマの腹部から工事音のような、ドキュドキュドキュというワケの分からない音が聞こえた。お腹が減るとグゥ、とかキュルルとかそういう音がするのだとばかり思ってたけれどサイタマは別格みたいだ。
手を洗って、急いで席に着いて箸を持つ。ジェノスは鍋の蓋を開けると湯気と共に美味しそうな香りとボコボコという音と共に食材が踊る。もう食べて良さそうだ。
いただきます。
3人で鍋をつつきながら、お腹が膨れる程に食べた。皆お腹が空いていたのか、締めに少しスープを追加して保存していたご飯とかき卵を入れて雑炊にまでしてしまった。
そして食後の今、片付けも終わったテーブルにて。
「今日は暇だったな。ま、事件もなく暇な方が平和で良いんだけどな。ほれ、取れよジェノス」
そう言ってトランプの背をジェノスへ向ける。
ジェノスの瞳が何かサーチモードになりかけたのを見て、「ズルは無し!」とサイタマが言うとジェノスは仕方なく真ん中辺りのを引き、手持ちから一枚引いた後に私へと向ける。
「早めに出てきて貰い、さっさと倒した方が良さそうです。俺がこの前逃がしてしまったガロウ…何者かと連んでいるのならそちらも対処したいものですし。
ハルカ、1枚引け」
私の番か。
食後の私達はトランプでババ抜きをして遊んでいた。遊びながら会話をしているけれど、実はこのババ抜きには罰ゲームが存在する。
なんと…負けた人は他2人から1つずつ質問をされ、必ず答えなくてはいけないのだという。私不利じゃん。もうフラグ立ってるんじゃない?だってジェノスはなんか解析できるし、サイタマは最終手段マジシリーズを使ってきそうだよ。