第6章 4.
森の中を歩き、ひとまず街へと向かう事にする。全裸のゾンビマンと並び道無き道をひたすら進んだ。手は繋がっていないし、明るいけれどまるであの時の続きのようだ。
ふと隣を見上げれば、いつの間にか木の新芽を口にくわえている。あんたはガキ大将か何かか。私の視線に気付いてか、進行方向に向けていた緋色の瞳は私を捉える。
「そう言えば何で銃なんて持ってんだ?お前なら銃なんか要らないだろ」
そんな事を言う理由は、私の持つ力を知っているから。
けれど、知らない人からしたら私の力は恐れられるだろう。
『ああ、これか。これはただの銃じゃないんだ。本物の弾丸が入ってないからね』
相棒を取りだして歩みを止めずに見つめた。見た目は銃。けれども鉛弾の入っていない銃だ。
ゾンビマンは「弾が入ってなきゃ武器の意味は無いだろ、強盗とかのフェイクには使えるかもしれないが」と実弾の使えない銃を否定した。
鉛弾が無いからと言ってモデルガンでも無いのが私の相棒だ。
『これは高圧縮した空気を撃つ為、そしてプラズマを撃ち込む為に必要な相棒だ。
無くても撃つ事は出来る、けれど中には手からいきなり風神や雷神の力を出したら怪人だと怯える人もいるだろ。だから見た目の補足用の為、かな…』
手にした銃を頭上に向けて風を込めて打ち込む。頭上から木の葉や小枝が落ちてくる。
『普通の銃の様な音も反動も無いし、弾切れもない。それでいて感電死や体内に打ち込んだ風で重要臓器を切り刻む。良いだろ?』
ゾンビマンは私の銃を受け取ってまじまじと見た。
遠くからだと普通に見える本体は、風を込める穴や、通電の良いトリガーが埋め込まれているので弾丸が出ないと分かるはずだ。
「お前なりに工夫してやってんのな。俺も銃を使うが…死なないくらいしか能がなくて大体泥仕合で勝つ。破損した肉体再生してる最中の俺を見て一般人は悲鳴を上げるけどな、助けたのに酷いよな」
と、大して悲しそうもない慣れたような口調でゾンビマンは言う。そして銃口側を持ち、返すと言って相棒を渡す。私は受け取って定位置に戻した。