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風雷暴見聞録

第71章 69.


「さて、俺らも帰るかね」

ベンチから腰を上げたゾンビマンは伸びをした。確かに座りっぱなしはキツいと思う。たまに立てば良いものを面倒臭がるから…まあ、エコノミー症候群になってもゾンビマンは関係ないか。

食事・休憩の為のゴミを持ち、エレベーターを下がる。
いつか一緒に組んで戦いたい、なんて思った事が過去にあったけれど、初めて組んだ今日は本当に何も無かった。余計に何も無さすぎて新たな疑いの目が向けられたらどうしよう、と思うくらいに平和だった。
そりゃあ…必ず毎日、ヘリ落とすとは限らないし、風神だってたまには休む日もあるのかもしれない。考えは分からないけれど。
一階に着き、出入口を抜ける。駐車場には既にタクシーが待っていてくれた。

流石に長時間吹きさらしの風に当たれば寒いもんだし、今日は暖かい鍋にしようかな、と今の内に同居人に連絡を入れる事にした。
3コールくらいでもしもし、という声。ジェノスだ。
サイタマも携帯を所持すれば良いものを…自由意思で怪人を倒しに行くらしいから、携帯を持つのは煩わしいのかな?連絡はサイタマの側に大体居るジェノスにする事にしている。

『ジェノス?…うん、私。今、上がりでF市から帰る所なんだけど、ジェノスはサイタマと一緒にもう家に居る?』

確か、サイタマとジェノスはZ市だったはず。
A市の本部から送られて、帰りはタクシーに乗らずとも部屋に帰れるだろう。しかもスーパーが近くにあれば買い物をして帰れるだろうし。

「俺と先生はもう家に帰って居るぞ。まだF市なら遅くなるだろうし、夕食は俺が作っておく。気を付けて帰って来い」

ちなみに夕食は先生の希望で鍋だと聞いて、やはりサイタマも同じ事を思ったんだろうな。くすりと笑って了解、と返して携帯を仕舞った。
タクシーに乗らず、私の電話を待っていたゾンビマンは煙草も吸わずただポケットに手を入れて待っている。

「同居人と仲が宜しいようで。ほら、とっとと乗れよ」

帰り遅くなっちまうぞ?と遠回りして反対側から乗り込むゾンビマン。私も乗って、タクシードライバーが私達を見る。

「…で、お帰りはどの辺まで送れば宜しいでしょうか?
私達、帰りはヒーローの家に近い場所に送り届けろと依頼されてるんです」

ちなみに後にヒーロー協会に料金を請求しますんでお金の心配は要りませんよ、とドライバーは言う。
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