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風雷暴見聞録

第71章 69.


チーン、と音が鳴り、ドアが開く。最上階に到達した様だ。
エレベーターの籠から出て風除室から外、屋上に出る。
デカい金のウンコと、プランターに植えられた植物。流石にビルの中でも高い方であって上空の風は強めだ。
屋上だから景色を見ながら休憩をする人も居るんだろうな。ベンチが幾つか置かれている。この様に風の強い日は座って昼食をするのに適してはいないと思うけれど。

ベンチに並んで昼食を取り、とりあえず座って様子を見る。
…といっても2人並んだ背後から襲われてしまっては複数人で居る意味がない。並ぶのは並ぶ、けれどもゾンビマンが西を向いて座ったとしたら並んで座る私は東を向いて座る。実際ここの方角は分からないけど。

「お前、寒くねーの?」

風で少し聞き取りにくいから、話をするにも声は少し怒鳴るように出さないと聞こえなかった。
といっても私達の会話を聞く市民はここには居ない。

『これくらいは平気、風神程じゃないけど私だって風くらい起こせる身だし』
「ああ、そうだったな」

風を使った攻撃手段は銃の中で圧縮して撃ち込むくらいだったし、イメージとしては雷の方が強いのかも知れない。実際に使うならば雷神の力を使う。皮肉にも瀕死になり、実験と改良をされて使えるようになった力ではあるけど、人助けに使えるならば段々とこの力が好きになってくる。
強くなれる。いや、こうやって強くなったじゃないか、私は。だから傍らに寄り添える位置に居られる。S級とは言え、8位と18位じゃ10も違う。けど、カテゴリーは一緒だ。

私は少し嬉しくなって、隣に座って違う方向を見ている恋人に寄り添った。


──結局、この日はF市に風神は現れる事なく、予定の時間を迎えてしまった。

本部に報告と、現在までに新たに発生した事件を聞く。他の市の方も今回は何も発生しなかった事と、新たに風神による被害と思われる事件は発生していないという事だった。
これは今日、無駄足じゃなかったという事で喜んで良い事なんじゃないか、と私は思う。今回各市で身を張って待っていたというのに、事件は発生しなかった。もし、待っている状態で事件が起こっていたら意味がなかった、という訳なんだし。
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