第70章 68.
流石本部、太っ腹だ。何台かのタクシーが待っている。
外に出てこれから風神をおびき寄せる者の為、その市まで送ってくれるらしい。といっても、全員が毎日ではなく今から向かうのが私とゾンビマンであって。
メモを持ったドライバーに「ゾンビマン様に風雷暴のハルカ様!私がF市までお送り致します」と行き先を知られていた(協会側が伝えたんだろうけど)
そう、話し合いにより、私はゾンビマンと組む事になった。というか、どういう組み合わせにするか?って話の時にゾンビマンが自ら私と組むと先に手を上げてた。
タクシーの後部座席に私とゾンビマンが乗り込み、運転席に乗り込むタクシードライバー。そのまま車は発進した。
「ここから結構時間掛かるからな、寝ておけ。
ほら、お前来る時に走ってただろ?疲れてねぇのか?」
と、来た時の事を言うもんだから思い出したかのように全身が少しだるくなり始める。
ああ、そりゃあ走ってきたからね。それに無駄に緊張してた事もあるし、安心感と思い出した疲れを感じてこれは少し休んだ方が良いかもしれない、と思う。無理をするとロクな事がない。
『ん、お言葉に甘えて寝ておくかな』
私がそう答えると、がさがさガラガラと色んな素材の物がぶつかる音。コートの中からあらゆる武器を取りだして車の中でコートを脱ぐ。
そして自らの太腿をパシンッ!と叩く。何がしたいの、ゾンビマン。
「特別に俺の膝枕を使わせてやる」
タクシーの運転手が居るのをお忘れかな?ゾンビマン。
さあ来い、気にせず使え等といちいち太腿を叩いて急かす。だ、だれが膝枕して寝るもんか!
意地でも太腿で寝ないつもりで、ドア側に体を寄せて目を閉じる。暗い視界の中、隣で舌打ちが聞こえて窓側の肩に何か触れたと思ったら倒された。
何となく予測はついてる。瞼を開ければ黒いズボン。私の体に少し暖かい布が被せられる。
「安心しろ、着いたら起こしてやるからな」
どくどくと鼓動が主張はするけれど、嗅ぎ慣れた香りと人肌にとても安心する。
『それじゃあ、宜しく』とだけ言って瞼を下ろした。