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風雷暴見聞録

第69章 67.


ハルカという名をもつ者が2人居て、更に別の名前を持っている。その片方がヒーローでその片方が怪人に分類されている。私にとってのヒーローとはゾンビマンだ。誰が何と言おうと、何度も救われてきたから彼こそが私のヒーローだ。
…そのヒーローってものは人を助けるものだったよね?同じ力を持つ自分の、元になった人間がが人を殺している。殺人鬼だ。オリジナルが悪でクローンが正義とはどういう事なんだろう?
オリジナルを倒したら、クローンである私はどうなってしまうのだろう?死んでしまうのか、クローンがオリジナルという地位に立てるのか。それともオリジナルも居ない世界でクローンのままなのか。

頭の中で色んな疑問が渦巻いた。
そんな考え事をしている私の視界の中に、ひょっこりと短髪の男が現れる。眉間に皺を寄せて。視線をそっちへ向けた時、男の右手が私の方へと伸びて私の鼻をぎゅっと摘んだ。

「おい」
『ふがっ…!?なにすんのちょっと、放しなさいよ!』

いつも以上に怒っているな。摘んだ鼻は解放されず、今も摘まれたままだ。
鼻を摘まれて私の話す声がおかしくなってる。私のそんな声を聞いたとたんにゾンビマンは眉をひそめた。

「お前、疑われたからって、お前の生い立ちなんかバラさなくたっていいだろうが!」
『だって、』
「だって、じゃねぇだろ」
『…ご、ごめん…?』

黙ってじーっと見た後、呆れたようにため息を吐いて解放された。これで鼻呼吸が出来て声も戻ったはずだ。
ゾンビマンは両手をポケットに入れて椅子に座ったままの私を見下ろす。

「お前はもっと自分を大切にした方が良い。粗末にしすぎだ。俺は死んでも死なないが、お前はたった一度の人生だろうが。俺が救った命、もっと大事にしろ」
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