第68章 66.
「なぁ、ハルカちゃん。本当にそいつが女だったのか?ハルカちゃんが、じゃなくてか?」
すぐ側のプリズナーが疑うように……いや、疑った。
連絡が来て決めた事。人だと思われない視線を貰っても良い。こういう、疑われる事、疑いの視線が嫌いだ。
「ハルカはちげぇよ、本人が否定してるだろ。それにそんな事をやる性格じゃねぇ」
ゾンビマンが庇う。
「しかしだな、ゾンちゃん。攻撃方法が風と電気…、一緒ではないか?」
一つ呼吸をして、決心をした。
『正確に言えば、私であって私でないって事。少し、話が長くなりますが…皆さん聞いて頂けますか?私の幼少時代の事を。
それを聞いてもまだ私、"風雷暴のハルカ"を疑うのなら、牢屋にぶち込もうがここに居る権限を剥奪しようがどうしようと構わない』
賛成も否定の言葉はなく、代わりにジェノスが腕を組んで言う。
「それを話してお前が良いのならな」
ゾンビマンを見る。相変わらず眉間に皺を寄せている。うん、66号とジーナス博士については言わない事にしてるから、心配しなくて良いよ。
シッチが頷く。私は椅子に座ったまま、私が孤児だった事を伝える。
そして嵐の日に雷に打たれ重症を負い、赤黒く全身を焼き爛れた事。その重症を負ったまま、とある博士に養子にされた事。やがて赤黒く爛れた肌は完治した事。博士が私を養子ではなく実験材料と見始めた事。77号という名前を付けられた事。人体実験をされて風と雷の力を与えられた事。とある人に引っ張られてその施設から脱走した事。なるべく短くなるように、簡潔に伝えていく。
そして…。
ヒーローになって少し経った頃、その養父が私のクローンを作っていたという事。それは風神・雷神という怪人を造ろうとしていて、私は怪人にされる手前で逃げ出せていた事。そのクローンは私が施設を抜け出す時に脱走していたという事。そしてS級に昇格してすぐ、そいつに遭遇してしまった事。そいつは自らを風神となのり、クローンだと思っていた風神は76号、私のオリジナルという事。
私が攻撃を受けた時、彼女が呟いた言葉"サイコス様に貰った、私だけの空"。
ジーナス博士とゾンビマンについては全く触れず、進化の家は施設と言った。
言った、言ってしまった。そこは向こうがクローンでも良かっただろうけれど言ってしまった。