第68章 66.
ガロウとの戦いで負傷中のタンクトップマスター、連絡の取れないメタルナイトとブラストが居ない中、集まれるだけ集まったヒーロー達を前にして協会の者であるシッチによって話は始まった。
「本題に入ろう。今回呼び出された理由がマスメディアで分かっている者も居るだろう」
世間ではヘリが数機と旅客機だと騒がれていたけれど…
実際はもっと物事が大きく。ヘリコプター墜落事故、戦闘機墜落事故、個人で持つセスナ機、そして今回の旅客機。飛行機関連が何者かの手によって墜落している。
そしてパラグライダー4人が晴天の中、全員感電死したという事。これらに共通する目撃情報が入ったという。
…数人、サイタマやジェノス、ゾンビマン以外の数人の視線を感じた。そりゃ晴天の中全員感電死となるのは変だ。電線に全員引っかかる?そんなのこのタイミングで無いでしょう?
それに主に上空の事件。風神の力で私は跳ねるように移動している。頑張れば空中に居るのも可能だけれど、ここにいるヒーローにとって良く分からない新人は疑いの中にいるようだ。
「その目撃情報は白いローブを着てフードを深く被っているのだという。これらの事件はつい最近…1週間以内に起こっている事だ!
今はそれくらいしか情報が無いのだが、その人物を捕まえて欲しい!」
白いローブも着ていないし、フードを深々と、というかフードすら着いていない服。それでも視線は私へとやって来る。
「なぁ、シッチさんよぉ。そいつってヒーローの中に居たりするんじゃねーのか?」
黄金バット。先ほど威勢良く叫んでいた男だ。
彼が発言すると視線の殆どが私の方へとやってきた。戦闘時にカメラを回されたお陰様で飛び回る事も、雷を起こす事も出来ると世間には知れ渡っているのだから。
『…言っておくけど私じゃない。最近、彼女に対峙した事はあるけれど』
「ああ?彼女?白いそいつは女だったのかぁ?そりゃ初耳だなぁ!!ほら、新情報だぞ、シッチさんよぉ?」
ここで言うべきか、対峙して手も足も出ずに病院送りにされた事を。そしたら理由を聞かれるだろう、何故手を出せなかったのか?何故女だと分かったのか?何故同じ力を持っているのか?
手の温度が低い。震える。ああ、言うべきだろうな、私が彼女のクローンであるという事も。私が風神を敵視してる事も伝えないと、味方である者達が敵となる。